鎚起作家 西片 浩 インタビュー
日々の仕事の中で感じる、鎚起銅器の奥深さ
この仕事に携わって7年目に入りました。
以前はちがう業種の仕事をしておりまして、家業である鎚起銅器が、どんな仕事で、どんな商品を作ってるかという認識は漠然としたものでした。
最初の頃は、ひたすら必死に仕事してきたというのがありまして、自分が持っていた認識と、実際に自分が作った物との違いを大きく感じるようになったのは、ここ1、2年のことです。まだまだ、技術的に足りない部分があると感じています。
職人として銅や銀を扱う中で、その素材の性質、良さ、そして美しさ……そういうものを、日々感じながら仕事をさせてもらってるのが、すごく幸せなことだと思っています。
鎚起の作業工程っていうのは、300年ほど前からやっていることは変わらない…その歴史の深さ、続いていること、伝わっていることの意味深さを感じています。
日々の仕事の中で、同じ商品作っていても、その場その場で、新しい発見があったり、難しさが出てきたり、まったく慣れたりすることがありません。
機械でつくる製品は、早くたくさん作れて精度も高いというように、良いところもあるんですけれど、昔の先人たちがやってきた仕事には、使う人にあわせていくような良さがあります。
時代に合わせられるからこそ、伝わってきた伝統技術
鎚起銅器は、生活用品を主に作っています。仕事の内容というか、工程は昔と変わらないのですが、現代の生活スタイルにあった商品を作るには、どういうところを意識して作っていくか…というのは、日々考えながら、仕事をしています。
作っている商品は、変わってきていますね。例えば、ひと昔前は、茶筒や茶托などお茶に関わるものが多かったのですが、最近では、酒器が多くなってきました。
酒器は、私どもが作っている物の中でも、高価な部類の商品です。お酒を楽しむ時間にさらに価値を見つけ、さらに高めたいと思う方々に鎚起銅器の商品がマッチしてきてるなっていうのは感じています。
工房に入る前に、ジュエリー関連の仕事を約10年ほどさせてもらいました。ジュエリー商品の開発に携わっていたので、お客さんが、「どのような傾向を持って、その商品を買い求めているか?」と、いうようなマーケティングの部分も、仕事のひとつでした。その経験を、活かしていきたいです。
将来的には、鎚起銅器の技術が、これまでに使われていなかった物、活かされていなかったところに広がっていくような、新しい商品作りをやっていきたいと思っています。