技術とこだわり

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鎚起とは?
金・銀・銅・錫などの素材を鎚(つち)で打ち起こす、金属工芸の技術の一つです。鎚起銅器(ついきどうき)は、一枚の銅板を大小さまざまな鎚やタガネを用い、焼鈍を繰り返しながら、打ち延ばし・打ち縮めという鍛金の技術を駆使して仕上げられたものです。 さらに、金属の表面に装飾を施す彫金(打出・片切堀・象嵌(ぞうがん)などの技術)があります。鎚起銅器は、日常雑器から美術工芸品へと二百年来の伝承技術として育まれています。

鎚起の起源
昭和年間(1764~1771)の頃、当時新潟県の弥彦山裏に間瀬銅山があり、産出された銅の精錬が燕で行われていました。そこへ仙台から来燕した藤七という職人が鍋や薬罐などの製造技術を伝えたとされています。また、鎚起銅器は燕市を中心とした、新潟県央地域のテーブルウェアー・ハウスウェアー産地のルーツでもあります。

鎚起工程
純度の高い金属は焼くと柔らかくなり、鎚(つち)でたたくと硬くなります。それを幾度となく繰り返して形を求め、想う形に近づけていき肌合いをととのえ、最後に着色をほどこし完成します。(左から右へ完成順)

花瓶

 

工程その一、その二
工程その一
ゲージ取り。銅板を、商品にあわせて切り取ります。

工程その二
銅板を叩いていきます。成形できていない叩きはじめは、木槌を使い、砂袋(写真の青い座布団のようなもの)の上で叩きます。

 

工程その三
工程その三
固い金属を叩いて成形するために、コークスの窯で焼き、柔らかくします。その後、そのままでは熱すぎるため、すぐに、水につけ、温度を下げます。その際に、表面についた焼錆がとれます。

 

工程その四-1

ある程度、形がまとまってきたら、今度は、木台(あがり盤)に座って、叩きます。

 

 

 

 

 

工程その四-2木台(あがり盤)です。欅でできています。穴の開いているところに、道具(鳥口や底ならし)を立てます。木台の置かれている作業場所は、叩いても響かないように、下段に土、上段にもみ殻が敷きつめた床になっています。

 

 

 
工程その四-3上段が底ならし、下段に鳥口です。底ならしは、底面を叩く際などに使用します。大きさは、さまざまです。品物や工程にあわせて、使い分けます。

 

 

 

 

 

sono4-3金鎚です。ならし鎚、しぼり鎚など、工程にあわせて、多数の金鎚を使い分けます。
 

 

 

 

 

工程その四-4鳥口です。これを木台にさし、金属板をかけます。その上から、鎚で叩きます。板のあたる面は、傷のないように磨いています。少しでも傷があると、叩いた際に、その傷が品物に写ってしまいます。

 

 

 

~工程の3、4を繰り返しながら、形を作り上げていきます~工程その5、その6
工程その五
更に、細部の製作風景です。 これは、急須の口を製作するために、小さな鳥口をたくさん立てています。金鎚も工程にあわせて使い分けていきます。

工程その六
最後に、仕上げの装飾です。これは、彫金のための道具です。
最後に着色したり、彫金を施したりします。

工程その七
着色は、高温で熱したり、煮色液で煮たり、藁で燻したり、錫や銀を鍍金するなどいくつかの方法で、それぞれの色合いをだします。発色後に、植物蝋や樹脂などで、それぞれの色に適したコーティングを施します。コーティングが丈夫なのですぐに変色することはありませんが、長い年月を経ることで、発色させた色は徐々に変化します。湿気を避け、乾いた綿の布で表面を撫でていると、より深い趣きある色艶となり末永くお楽しみいただけます。

紫金色
紫金色
銅の表面に錫を薄く焼き付け合金化した生地に、流化カリウムで着色後研磨し、煮色液でさっと煮た色。
藍古色
藍古色
硫黄液で銅の地を黒くした後に研磨し、煮色液でさっと煮た色。
風紋色
風紋色
銅の表面に錫をかすれるように引き錫を銅に焼き付けた後、藍古色と同じ手順で発色します。
生地色
生地色
藍古色と同じ手順ですが、研磨時に黒色を磨き落とし、煮色液でさっと十数秒間煮込む。鎚目の深い部分には磨き落とせない黒色がうっすらと影のように残ります。
紅色
紅色
銅を溶ける寸 前までバーナーで炙りながら焼きます。
茜色
茜色
紅色を一部施し、残った銅の地の部分を藍古色と同じ要領で発色。
宣徳色(煮色)
宣徳色(煮色)
銅の表面をよく研磨し、煮色液で30~40分煮込んだ色。条件が良いと鮮やかな朱色になります。何月を経ると徐々に茶褐色に。
宣徳燻
宣徳燻
宣徳色発色後に表面を藁を燃やした煙で燻したもの。変色の進みやすい宣徳色には渋みも増して有効な手段です。
茶色
茶色
硫黄液で銅の地を茶色くしたもの。銅をこの液に浸すと一瞬虹色を見せ、薄茶色~茶~こげ茶~黒、という風に変化します。
錫被茶色
錫被茶色
銅に錫を引いたとき、一部にマスキ ングをかけて銅の地を残し、硫黄液で茶色く発色させたものです。

注記:
煮色液自体は、銅に塗りこみ染色をしているのでなく、 銅の表面を綺麗に発色させる手助けをするものです。 液の成分は表面には残りません。 伝統的な着色方法に水の割合や工程などに独自の工夫を重ねて色が仕上がっていきます。

緑青は無害です。有害と思われていた時期があり誤解されていますが、厚生労働省も無害と認定しています。
銅は、殺菌効果やイオン効果が注目され、さまざまなところに使われています。ただし、過去の誤解からご心配されないように、急須や茶筒など食べ物や口が直接触れる部分には錫や銀びきを施しています。
銅は、厚生労働省の認める栄養機能食品の栄養成分のひとつでもあります。


一連の制作風景を動画にまとめています。こちらも是非ご覧ください。


鎚起銅器の特徴
■ 殺菌作用 銅には殺菌作用があります。錫や銀もイオン効果で水を浄化します。 銅の花器は花を長持ちさせ、急須・やかんなどは、うまみをひきたてます。 錫の酒器は、イオン効果で酒をまろやかに美味しくします。

■ 熱伝導 銅や錫は熱伝導率が高いです。 銅のやかんはすぐに湯が沸きます。 銅や錫の酒器は、早く燗がつき冷酒も涼やかに引き立ちます。

■ 丈夫で長持ち 銅や金銀錫の器は、使いこむほどに趣きのある艶を加えて、 陶器などと違い壊れず、長年ご愛用いただけます。 万一、落下などで破損しても再生などメンテナンスができます。 まさに一生モノの逸品です。

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