鎌倉清雅堂 開店25年 鎚起作家 西片正インタビュー
2021/07/19
鎌倉清雅堂は、鎌倉の地で工房清雅堂の品々を直販する店舗を開業してから25年目に入ろうとしています。
古都鎌倉は、鎌倉大仏をはじめとして神社仏閣や古い建物など金属を使った建造物が時を経て今も息づいている場所。
この地で、工房 清雅堂の金属工芸の魅力を伝え、お客様に日常的に愛用し楽しんで頂くことをコンセプトに運営して参りました。
観光で鎌倉を訪れたお客様だけでなく、地元の方々にも多くご利用いただけていることを嬉しく感じております。
長いお付き合いとなりました清雅堂の鎚起作家 西片正さんに、昨今の工房の変化や時代の流れについてお話を伺いました。
西片正のご紹介はこちら
https://kamakuraseigado.com/nishikatatadashi/
作り手と、使う人の距離が近くなったと感じます
私どもは、弥彦村という、とても景色のいいところに工房を構えております。
工房の窓からは弥彦山の姿を望み、その山の裏は海です。弥彦山には、1700年代に間瀬銅山がありまして、その採れた銅を精錬するところが燕にあった……そういうところから、鎚起銅器という仕事が始まっているわけです。
30年ほど前に、この弥彦村に工房を建てることができたんです。ここは、人口が8000人ほどの農業村なので、作品を展示する場を持った工房というのは、ちょっと目立つものなのですが、すごく可愛がってもらえて地域に馴染むこともできました。
工房ができてから5年ほどたったときに、鎌倉清雅堂さんからのご縁をいただき、それから25年を迎えますが、その間、いろいろなことが様変わりしましたね。
かつて鎚起銅器の品物は、ほとんど全て問屋さんを通して全国に回っていくものでしたが、鎌倉清雅堂さんの存在があって、お客さんと直に関わって品物を届けられる機会ができました。
また、インターネットで、画面を通してですけど、多くの方々の目に触れてもらえるようにもなりました。
今の時代にあった形で、私どもの仕事が伝達できてるかな…と思いますね。
そして、使う方々の声を、私どもに直に届けて頂けるようにもなりました。お客様の気持ちを頂いて、それを仕事を通してお返ししていく、これが一番大切なことです。
さまざまな価値観の中で、選ばれる品を作っていきたい
鎚起の仕事は、文字通り、鎚で起こす。その鎚の跡、作る工程が痕跡として作った物に残っている。それを大事に撫でながら使ってもらうと、味になります。
「大切に使うことで物が育つ」という言い方もされますが、物を大切にしたい気持ちって、人に言われてするんじゃなくて、それぞれが自分で感じてするものです。
使っていて「これがいい!」って感じるのは、本当に人によるものです。好みだったり、生活環境だったり、季節や気候によってもかわるし、使う人の歳や健康状態でも違ってくるものでしょう?
例えば、今、私どもが作っている日常のものって、100円ショップでも間に合うようなものもあるわけです。
100円ショップで買ったけど、これはいいよ! みたいなのもあるでしょう? 100円の物はダメみたいなことではなくていい。100円の物にも、楽しさがあるでしょう?
価値の幅が広がっていってると思います。値段ではなくて、両親・祖父母が使っていたものを受け継いだり、自分だけの思い入れがあったり、価値のつけ方も人それぞれ。
量産の物であっても、私どもが作っているよう手作りの物であっても、値段の高い安いにかかわらず、「大事に使う」というところから見て比べて、そこで、私どもが作った物が選ばれたら、それは自信につながります。私ども職人は、いい具合に評価を頂いて褒められると、喜んでどんどん作りますから!
価値観や評価は、時代と共に変わっていくけれども、私どもの役割は何かって言うと、仕事さしてもらいながら時代とつきあい続けていくことじゃないですかね。
鎌倉清雅堂さんから、直接お客さんの声を聞く機会をいっぱいもらってるっていうのは、本当に感じます。これからも、お互いにアンテナを広げて様々なことを吸収しながら、次の時代・世代にも鎚起の良さを伝えていきたいですね。
鎌倉清雅堂は、これからも工房とお客様をつなぐ役目を、喜びを持って続け、精進して参ります。